令和6年2月5日
田園調布支部
剣心会 山本恒夫
【開催日程】令和6年2月3日(土)~4日(日)
【開催地】 青松庭 白砂(千葉県長生郡白子町古所)
【参加者】 総勢41名
恒例の大田区剣道連盟研修会が、今年も青松庭・白砂を会場に開催されました。
今年はご指導に、栗田和市郎範士八段をお迎えし、総勢41名、平均年齢60.7歳、
最高齢77歳、最年少43歳、そして何と7段以上が約6割の24名という、平均年齢
同様に、ハイレベルな研修会となりました。
第一日目は、大岡大田区剣連会長からの開会ご挨拶を皮切りに、栗田師範による日本
剣道形を大変分かりやすくご丁寧にご指導頂きました。
① 自分で理解するだけでなく、人に伝える・指導出来るようになって欲しい
② 日本剣道形の共通理解7箇条」(詳細は省略)などを特にご指導頂きました。
その後、休憩を挟んで、地稽古をし、この日の研修会は終了しました。
稽古後には、日本の原風景とも言える白砂松青の佇まいを愛でながら、温泉で湯けむりに身をまかせ、当地自慢の海山の幸を、剣友達と存分に満喫しました。
第二日目も、栗田師範による、先ずは基本稽古のご指導を頂き、その後は、昇段審査の
模擬審査を行いました。四段から七段を目指す方々が、栗田師範の前で昇段審査さながらの稽古を行い、師範よりそれぞれに講評を頂きました。大変貴重な経験でした。
その後地稽古を行い、二日間の研修会は、大きな怪我などもなく無事に終了しました。
また今回ご参加いただけなかった連盟会員の皆様向けに、以下に配布資料の内容を公開いたします。
来年の研修会は、大森支部の方々を幹事に、1月末か2月初めの週で開催予定です。
来年の研修会が今年以上に盛大で且つ有意義な会になる事を祈念しまして、
令和5年度大田区剣道連盟研修会開催結果報告とさせて頂きます。
以下配布資料
日本剣道形
1. 日本剣道形制定の経緯
明治44年(1911)7月、「中学校令施行規則」が一部改正され撃剣が柔術と共に中学校の正課として採用されることになった。そこで、大日本武徳会・文部省・東京高等師範学校の三者が協議し、明治44年12月、剣道形制定の調査委員会を設置した。主査として根岸信五郎・辻真平・内藤高治・門奈正・高野佐三郎の5氏が委任され草案を作成した。更に全国を11区分し、20名の調査員が招聘され、鋭意調査研究の結果、大正元年(1912)10月16日、「大日本帝国剣道形」が制定された。指導上の統一を図ることを目的に、いずれの流派にも属さない流派統合の象徴として制定したものである。大正6年(1917)9月、所作に関する細部の解釈の違いから不統一が顕著となったため「加註」が施された。
さらに昭和8年(1933)5月、剣道形の更なる普及発展と細部の所作に対する詳解の必要性から「増補加註」及び写真説明(打太刀:高野佐三郎・仕太刀:小川金之助)がなされ、統一の徹底が図られた。
昭和27年(1925)、全日本剣道連盟が結成され、大日本帝国剣道形を「日本剣道形」と改称し、実施することになった。昭和56年(1981)12月7日に、文書表現や仮名遣いを現代文に改めた「日本剣道形解説書」を作成した。平成元年(1989)に「講習会資料」の作成がはじまり、平成15年(2003)に「剣道講習会資料」第1版が発行され、現在第6版(平成24年発行、同29年一部改正)に至る。
2.意義
日本剣道形は、長い歴史を持ち、理合・精神面に深い内容を持つまでに発達した伝統
文化である。この伝統文化である剣道形を正しく継承し、次代に伝えることは大きな
意義がある。
3.日本剣道形修練の目的
日本剣道形の修練を通じて、剣道の原点である「剣の理法」を学び、剣道の正しい普及発展に役立てることが目的である。
4. 重点事項(剣道講習会資料)
(1)立会前後の作法、立ち合いの所作、刀の取り扱い。
(2)正しい刀(木刀)の操作(刃筋、手の内、鎬の使い方、一拍子の打突など)や体さばき。
(3)打太刀、仕太刀の関係を理解し、呼吸を合わせ、原則として仕太刀は打太刀より
先に動作を起こさないこと。
(4)打太刀は間合に接したとき、機を捉えて打突部位を正しく打突し、仕太刀は勝機を逃すことなく打突部で打突部位を正確に打突すること。
(5)形の実施中は、目付け、呼吸法、残心などを心得て、気分を緩めることなく終始充実した気迫で行うこと。
5.日本剣道形の効果
日本剣道形は、先人が英知を傾け、鋭意調査協議を重ねて制定したものであり剣道の基礎的な礼法や技術、そして剣の理法を示したものである。髙野佐三郎『剣道』では「斯道の練習法三様あり、第一・形の練習、第二・試合、第三・打ち込み稽古、是なり」と形練習の重要性を説いている。剣道形の修錬により以下の効果が得られる。
(1) 礼儀作法や落ち着いた態度が身につく。
(2) 姿勢が正しく、動作も機敏になる。
(3) 相手の気持ちや動作を観察する観の目が養われる。
(4) 技術上の悪癖をなおすことができる。
(5) 呼吸や正しい太刀筋を会得できる。
(6) 間合や打突の機会を修得できる。
(7) 打突が正確になり残心が会得できる。
(8) 気が練れて、気迫、気合や発声が充実する。
(9) 心と技の理合が会得できる。
(10)気位が高まり、気品や風格が備わる。
6.「日本剣道形」修錬における基本的な留意点
(1)日本剣道形解説書、講習会資料「日本剣道形」を熟読、精通して剣の理法に基づく剣道形を体得する。
(2)立ち合いの所作および刀の取り扱いを適切に行い、正しい刀(木刀)の操作(刃筋・鎬の使い方・手の内)、一拍子の打突や体さばきを正しく行う。特に小太刀の置き方に留意すること。
(3)五つの構え、および小太刀の形においては、半身の構え、入り身に所作を自得すること。
(4)打太刀(師の位)、仕太刀(弟子の位)の関係を理解して呼吸を合わせ、合気となり、終始充実した気勢、気迫で行う。原則として仕太刀が打太刀より先に動き始めないようにする。
(5)太刀の形は、「機を見て」(機とは、心と体と術の代わり際に起こるときの兆しのこと)打つのである。この場合、打太刀が仕太刀に勝つ所を教えているもので、打太刀は仕太刀が十分になったところを見て打つ。打つということは切るという意味である。
(6)小太刀の形は、「入り身になろうとする」を打つ。「入り身」とは、気勢を充実して相手の手元に飛び込んでいく状態をいう。「なろうとする」ことから形に表さない。打突の機会を適切に行う。
(7)目付けは原則として、相手の目を見るが「遠山の目付」で行う。
(8)足さばきは「すり足」で行い音を立てず、一方の足を移動させたときは原則として他方の足を伴って移動させる。
(9)仕太刀の打突後の残心は、形に示されている、いないにかかわらず、充分な気位で残心を示し、打太刀は仕太刀の充分な残心を心得てから始動する。
(10)打太刀は、間合に接したとき、機を見て打突部位を正しく打突し、仕太刀は打突部で打突部位を刃筋正しく打突する。また、振りかぶった剣先は両拳より下がらないこと。
(11)技に応じて、緩急強弱を心得て一拍子で行うこと。
(12)呼吸は構えるときに吸気し、前進するときは、丹田に気迫を込め、呼気の気勢で打突(発声)すること。
(13)形の実施中は、初めの座礼から終わりの座礼まで、特に構えを解いて後退するときも、気分を緩めず、終始充実した気勢で行う。
7. 日本剣道形の「共通理解」(令和4年4月)
(1)中断の構えの延長とは、棟の鍔元と切先を直線で結んだ延長をいう。
(2)太刀一本目、打太刀正面打ちを抜かれた剣先の高さは下段程度。(審査上の着眼点は「下段よりやや低く」、指導上の留意事項は「下段」とある)
(3)太刀四本目、双方切り結ぶ位置は、およそ刃の中央部、剣先は正面の高さ。
(4)太刀五本目、仕太刀の中段の構えは、一拳前に出し、刃先はやや斜め下。
(5)太刀六本目、仕太刀がすり上げ小手を打った時、右足を踏み出し左足を引き付けるを原則とするが、間合によって引き付けなくても、踏み出したと解釈する。
(6)太刀七本目、仕太刀がすれ違いながら右胴を打つときの方法。
①右足を右前に開いたとき刀を左肩に振り上げ、左足を踏み出すと同時に右胴を打つ。
②右足を開いても(体は移動させない)刀を振り上げず、左足を踏み出すと同時に振り上げ振り下ろし、一拍子で打つ。(修錬者の錬度に応じて指導する)
(7)小太刀半身の構えの刃先の方向
①中段半身の構えは、刃先をやや斜め下に向ける。
②下段半身の構えの刃先は、真下とする。